子どもの言葉や思いを引き出すために大切なこと

コラム

子どもと関わる時間が長い親や支援者は、子どものことが分かっていると思いこんでしまって、あたかも大人同士で話すかのようなペースで言葉を投げかけてしまうことがあります。特に子どもとの関係性に「慣れ」が生まれてくると、顕著にそれがみられてくるような気がします。

今回のコラムでは、子どもとの関わり方の中で、言葉や思いを引き出すために大切だと思われることについてお話します。

ある小学校の低学年のS君と、お母さんのやりとりの様子

お母さん
お母さん

S君、何かしたいことある?

考えておいてね~。

お母さんは、そう言ったそばからすぐに

お母さん
お母さん

決まった?まだ決まらないの?
これしたいの?違うのがいい??

間髪入れずに言葉をどんどん投げかけていきます。

S君は何かに取り組んでいる最中でしたが、お母さんは他の方を向きながら目も合わせずに

お母さん
お母さん

もうできたかな?
次は何しようかな~?

と、言葉をかけてきました。

S 君
S 君

・・・。

S君はもちろん自分に向けられた言葉とは気づかず、作業に没頭しています。そんな状態なので

お母さん
お母さん

次、何するか決まった?

と、言われても、S君はチンプンカンプンな様子です。

S君
S君

???

子どもとコミュニケーションを取るときに大切な「待つ」ということ

子どもたちとコミュニケーションを取る上で、彼らの言葉や思いが出てくるまで「待つ」ということはとても大切です。いろんな支援活動に関わってくる中で、冒頭の例のように、親や支援者である大人がなかなか「待てていないな」と感じさせられるシーンが幾度となくありました。

大人が考えるペースと同じように子ども自身が考え、話をしたり動いてくれるわけではありません。
もし、そう思っている人がいるとすれば、それは全く違います。

子どもたちは体験してきたことや、それまで経験してきたことはそれぞれ違います。
私たち大人たちとっては、何度も経験したような同じシーンに出くわしたとしても、その子にとっては「初めての体験や経験」かもしれません。

さらに、コンピューターに例えるならばCPU(中央演算処理装置)が大きく違います。言葉を受け取るスピードや処理するスピードに差があるので、同じ問題を出されても、その答えを導く速度は、大人と子どもとでは圧倒的に違います。知っている語彙(ごい)の量にも圧倒的な差があります。

ポケットサポートでの実践

私たちが日々関わっている病気を抱える子どもたちは多様で、病気の種類や、入院や療養によって起こる空白(ポケット)はもちろん、年齢や物事の理解度も様々です。見た目に体が小さくて可愛らしい外見をしていても、年齢は中学生や高校生だったり・・ということもあります。

新型コロナウイルス感染症の影響で、現在ポケットサポートもリモートでの学習支援や交流支援を行っています。10月からは大学生の学習支援ボランティアも、感染症対策をした状態で参加できるようになりました。

リモートの支援の中では、インターネット通信の状況や、マイクやスピーカーやwebカメラの問題など、対面では起こりにくいハプニングも発生します。

そんな状況の中でもポケットサポートのスタッフやボランティアたちは、その子どもに合わせたペースで言葉を使っていました。会話が盛り上がってくるにつれ、早くなりがちな喋るスピードを少しゆっくりにしてみたり、こちらから投げかけた言葉の返事を待って、時にはわかりやすい言葉に変えながら、上手く言葉のキャッチボールができていました。

先日の支援でも、インターネットの接続が上手くいかないときでも焦らずに対処。むしろそのハプニングを、止まっていた大学生の顔が変顔になったと、笑いに変えながら臨機応変に対応していました。

自分のことをちゃんと受け入れてくれていると安心している様子の子どもは、学校生活のことや、病気の治療の中で大変なことなど、たくさん話をしてくれていました。この日も、ポケットサポートのリモート支援の画面には、とても和やかで温かい時間が流れていました。