2021年度を振り返って(代表理事メッセージ)

コラム

2021年度も世界的に猛威を振るう新型コロナウイルス感染症の影響は大きく、私たちの業界だけでなく、この報告書を目にする皆様にとっても、先の見通しが立ちづらかった年ではないでしょうか。

しかし、そんなコロナ禍中でも多くの方のご協力やご支援、スタッフたちの頑張りによって、病気を抱える子どもたちへの支援を継続して実施することができました。

昨年度にある子どもが言った「時代が俺たち(病気を抱える子どもたち)に追いついてきた」という言葉が、本当にそうなるかのように、オンライン化が子どもたちの追い風となり、より前に進んだこともあった、そんな1年でした。

ミッション(ポケットサポートが社会で果たすべき使命)

①環境をつくる
②生きる力を育む
③人や気持ちを繋ぐ

環境をつくる

1つ目のミッション「環境をつくる」では、今年度も学習支援や復学支援、子どもたちに関わる支援をオンライン化して実施しました。

約5年前から行ってきたICTによる学習支援や、学校行事の中継など、今までポケットサポートが培ってきた様々なノウハウを存分に活かし、病院に入院している子どもたちへのオンライン支援は前年度よりも増加しました。

入院中~退院後の自宅療養へ移行した子どもへの支援では、切れ目ないサポートを届けることができました。今年度から開始した週末の「ポケサポデー」は、自宅療養中の中高生たちを中心に、大きな盛り上がりを見せました。

同じような病気療養を経験してきた仲間たちが集うこともあり、病気を抱える10代の若者やきょうだいがそれぞれの立場で経験を語り、励まし合う、そんな姿も見られました。

YouTubeライブ配信による学習講座の配信やイベントも同様に、ステイホーム中の子どもたちやご家族、オンラインのシンポジウムでは全国の支援者の方々とも多く繋がり、活発な意見交換や交流ができました。

2021年度はポケサポならではの新たな学習支援や交流支援、啓発活動を届けるシステムがどんどん出来上がっていったように感じています。

生きる力を育む

2つ目のミッション「生きる力を育む」では、今年度を振り返ったときに忘れることはできない、8ヶ月の長期入院、治療を経て自宅療養になった子がいました。

彼とは入院から退院後、自宅での長い療養生活の間も、ほぼ毎週のようにオンラインで顔を合わせながら過ごしてきました。笑い合い、ときには不安な姿を見せて相談を受けるなど、大学生の学習支援ボランティア(パートナー)たちと一緒に励ましあいながら過ごす時間もとても長くなっていました。

そんな彼は、この4月から新たな道に歩むため、進学を果たします。特に3月末のオンライン交流支援では、しみじみとした感じを醸し、大学生のパートナーたちと少し涙ぐみながら、挨拶を交わす姿が見られました。

お互いに、頑張ってきた姿をずっと見てきたからこそ、「これからがんばるよ~」「みんなも頑張ってね~」と今までの気持ちやエールが飛び交うシーンは本当に印象的でした。

ポケットサポートができる、入院中から退院後まで切れ目ない繋がり、そしてみんなで「生きる力を育んだ」忘れられない事例です。

「ポケサポ相談ダイヤル」にも岡山県内だけでなく、県外からも多くの相談やご連絡をいただきました。特にコロナ禍の復学に関するものが多く、学校側が理解してくれず困惑している状況や、これから就学するにあたってどのような支援を学校へ求めていけば良いかなど、ポケットサポートが復学に関する専門性を求められることが多くありました。

ときにはケース会議に出席し情報を提供しながら、毎回、保護者・本人の言葉に耳を傾け、ひとつひとつスタッフが丁寧に対応していきました。子どもや保護者との出会い、相談いただいた内容は、当団体にも大切な財産となっています。

人や気持ちを繋ぐ

3つ目のミッション「人や気持ちを繋ぐ」では様々な「繋がり」を生むことができました。

岡山県教育委員会の「長期療養児教育サポート相談窓口」との協働では、今年度も長期入院を余儀なくされている高校生への遠隔授業のサポートを数件実施することができました。

入院中でも所属高校の授業へ参加することができ、学びを途切れさせないということが実際に行える素地が固まってきたように思います。また、入退院を繰り返す子どもが院内学級に在籍をしながらも、院内学級の授業以外の時間に地元の学校とオンラインで交流する取り組みも実現できました。

この事例は医療機関、学校、家族、そして私たちNPOも協働の中に入り、ケース会議と現場での支援実施が行なわれました。「繋がり」といった点で、とても印象的だったのは入院中のAさんと自宅療養中のBさんがオンライン交流の場で繋がったことです。

このAさんとBさんは初対面でしたが、同世代と言うこともあり、自己紹介などをした後、そこまで時間をかけることなく関係が育まれていきました。同じように闘病している者同士と言うこともあり、治療中のあるある話や学校生活の事、友達関係の事など気軽に話せる間柄となっていました。

特に入院中のAさんは、このことがとても嬉しかったらしく、病院のスタッフにBさんとの話をよくしていたと報告も受けました。私たちとしても入院中の子どもと自宅療養中の子どもが繋がるということは初めてのことで、オンラインでの支援ならではの事例となりました。

夏には、地元企業の萩原工業様のご支援より、大原美術館様とコラボしてオンラインツアーも実施することができました。小児がんの子どもの支援を行っているチャイルド・ケモ・ハウスさんともコラボし、神戸市のお子さんとご家族も参加していただくことができました。

感染症対策のため外出が難しい昨今ですが、みんなで楽しく美術について学べる機会を持てたことによって、とても素敵なイベントとなりました。

Yahoo!基金の助成で実施した「みんなで応援BOX」の配布では、これまでの利用者だけでなく全国から応募があり、新たな関係性を育むことができました。同時に「ひとりなじゃないよ」という私たちのメッセージを多くの当事者たちへ届けることもできました。

2022年度に向けて

2022年度も病気を抱える子どもたちの様々な社会課題の解決に向け、どんな状況下でも安心して学び、交流のできる場を提供できるよう取り組んでいきたいと思います。

支援活動を行っていくために欠かせない、医療機関や学校などの様々な機関・人と、連携・協働しながら、この1年も変わらず病気による困難を抱える子どもたちを支える支援団体として認定NPO法人ポケットサポートの応援をよろしくお願いいたします。

認定特定非営利活動法人ポケットサポート
代表理事 三好 祐也

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