退院していく子と大学生ボランティア(パートナー)との関わり

コラム

長期入院を経て、子どもが退院し地域(自宅)へ戻っていく。それはとても喜ばしいことであり、支援者としても一つの区切りを迎える気持ちになるものです。

ただ、子どもや家族本人たちにとっては「退院」も、素直に喜ぶだけではないことがあります。大学生の学習支援ボランティア(以下、パートナー)は、ポケットサポートの支援活動で子どもたちやご家族との関わりを通して、長期の病気療養をする子どもたちのリアルな思いに触れていきます。

周囲との「退院」についてのギャップ

「退院」と聞くと、病気による入院経験のない人や、そういった人と関わりがない場合は
「子どもなら学校に8割程度通える」
「社会人だったら定時の仕事くらいならできる」 など
体調も優れていて健康状態もほぼ良好になっているから帰ることができるんだと感じることも少なくないでしょう。

しかし、小児がんや心臓疾患など慢性的な疾患を抱える子どもたちは、病気の状態が完全に良くなる(完治)までかなりの長い時間を要したり、ともすればその病気自体と一生付き合っていくということもあります。感染症にかかりやすい状態にあったり、体力が減退している、入院中に教育を受けられなかったなど、医療の面でも社会的な面からも困難な中、病院から帰っていくことになります。

病院という場所は、清潔や栄養の管理が行き届いていて、周りにいる人たちも病を抱えている人、そして治療やケアにあたってくれる専門のスタッフの人たちに囲まれた空間です。

ひとたびナースコールを押せば、24時間誰かが駆けつけてくれる、いわば病気を抱える人たちにとって医療の面から「安心できる空間」となります。

それが地域に戻る(自宅へ帰る)となると、状況は一変します。
昨日まで、さっきまで、医療の面で「安心できる空間」だったところから、まったく違う環境に移っていくことになります。

地域(自宅)で清潔や栄養の管理、助けてくれる人は誰でしょうか?そうです。家族や自分自身です。
今まで専門のスタッフの人たちに頼っていたことを自分たちでしなければならないのです。

「安心できる空間」から、「不安がつきまとう空間」へと変わる。

特に今のような感染症の流行っている状況ではなおさらです。退院した後の地域(自宅)は、病気になって入院する前のそれとは生活する文化そのものが違う、まさに「異文化社会(交流)」のようなものといえます。

大学生学習支援ボランティア(パートナー)の初回研修で行う「声掛けワーク」

ポケットサポートでは岡山県内の大学生が、活動に参加してくれています。

主に医療や教育、福祉などを学んでいる大学生たちが申し込むことが多く、年に2~3回開かれる「学習支援ボランティア説明会・初回研修」を受講することで支援活動への参加が可能になります。

研修においてのプログラムは医療機関や保健所、大学教員からの助言を受け作成しています。
その初回研修で医療機関や保健所、大学教員からの助言を受け作成したプログラムの中で「声掛けワーク」を実施しています。

パートナーたちの大半は、病気を抱える子どもたちやきょうだいに初めて接するため、支援活動の中で「こんなとき、どんな言葉をかけていいのか」戸惑う場面があります。

置かれている状況から気持ちを想像するワーク

そんなリアルな場面を想定した「声掛けワーク」の中に
【退院が決まったけど、何か元気がなさそうな様子】というケースがあります。

「声掛け」そのものに正解があるわけではありません。しかし、頑張っている子どもたちに「頑張れ」という言葉を使わずに前向きになってもらうためには、不安を抱えている子どもたちが少しでも希望を持ってもらえるためには、とグループワークを通してパートナーたちは自分たちなりの声掛けの方法を考えていきます。

退院していく子どもとパートナーとの関わり

まさに先日、約8か月の入院生活を終えて退院するAさんがいました。
いつも通りの交流を終えた後、「退院するAさんに、一言メッセージをお願いします」とパートナーたちへ伝えたところ、彼らは初めての体験に、戸惑いながらも、自分なりの言葉を紡いでメッセージを送りました。

Aさんも最初は、恥ずかしさの裏返しからふざけた感じの様子を見せてましたが、終了間際に「このままリモート切ったら、泣いてしまうかも」と言い、長期入院の中で心通わせていた関係性だからこその、ひとつの区切りを感じている様子でした。

支援終了後の振り返りでは、パートナーたちからAさんと長期間関わってきた経験をかみしめている言葉が聞かれました。

パートナーXさん
パートナーXさん

「研修でやったことあるのを思い出したけど、いざとなると言葉が詰まってすぐにかける言葉が出なかった」

パートナーYさん
パートナーYさん

「ふとしたときに、あの子のことを考えることがあった。退院って聞いて嬉しかったけど、これからも通院したりとか安静が必要って言ってたし、コロナ禍もあるし、大変な生活になりますよね。自宅にもどってもリモートにつないでもらったりして、支えていきたい。」

パートナーZさん
パートナーZさん

「入院したところから長く関わってて、あの子との色んなことを思い出して、良いときもそうでないときも見てきたから、感極まりそうになった。」

初めて経験する長期入院児への「退院おめでとう」はパートナーたちにとっても、子ども自身にとっても一つのステップとなる経験のように感じました。

ポケットサポートは「長期にわたって子どもたちやご家族と継続したかかわりができる」というNPO法人ならではの特徴があります。

これからも社会への啓発も含め、パートナーたちと共に子どもたちのたくさんの「退院」を見守りながら、病気を抱える療養児たちが将来に希望をもって安心して暮らせる社会・コミュニティ作りを目指していきたいと思います。