どうして病気の子どもに教育が必要なのか?

コラム

病気の子どもに教育は必要でしょうか?

この問いに対して、多くの方は「YES」と答えてくださるでしょう。

日本では全ての子どもに対し「教育を受ける権利」が保証されており、様々な子どもたちが学び舎で、友だちや先生と一緒に教育を受けています。 病気で入院していたり、長期療養を強いられている子どもを目の前にすると、先の質問の答えが変わってしまいがちです。

元気になってからまた一緒に勉強しようね

退院して戻ってきてから、学校に来ればいいからね

元気でなければ、勉強をしてはいけないのでしょうか?
退院して学校に行けるくらいの状態でなければ、教育は受けられないのでしょうか?

病気やけがにより長期欠席(30日以上連続して休んでいる)をしている子どもは、全国で約50,000人以上もいます。(「学校基本調査」より)
そして、25年度に初めて国が行った調査によって、小児がんなどの疾患による治療が必要で、30日以上、病院に入院をしている「長期入院」を強いられている子どもは、全国におよそ6,300人いるというデータが明るみになりました。

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/__icsFiles/afieldfile/2015/05/26/1358251_02_1.pdf

その中でも継続的に教育を受けられている子どもは、わずかだということも分かりました。 私自身、5歳より慢性のネフローゼ症候群により8年間にわたる長い間、入退院を繰り返していました。幼稚園の卒園前に発症したため、卒園式は病院のベッドの上で、園長先生たちが来てくださった思い出があります。

小学2年生の頃に、病院の中に「院内学級」という入院中の子どもたちが通う学校ができました。そこへ中学2年生までの長い間通うことになりました。病院の中でも教育を受けることができたことで、今の自分があること、教育の大切さを痛感しています。

大学生になった私は、お世話になった院内学級で学習支援のボランティアを始めました。その後、大学院へ進学し、病気の子どもたちの教育について研究を行いました。その中で多くの子どもたちやそのご家族、医療や教育、院内学級に関わる方々と出会いました。

子どもは入院中、とてもつらい治療と闘いながら、過ごしています。大好きな家族と離れ離れになってベッドに寝ているとき、様々なことを考えます。

「学校の友達は今何をしてるんだろう。僕のこと忘れていないかな。」

「退院して帰った時に、私の机や椅子はあるかな。」

一方で、白い天井を見つめるその視線を横に向けると、点滴に入った薬。病室にいる時には、病気の自分しか想像させてくれません。 しかし、算数の問題を解いている時や英語の単語を覚えている時には、そんな「病気の自分」から解放されて「子どもらしい時間」を過ごすことができます。

「(だって、)勉強しとる時は病気のこと忘れられるんやもん。」

ある小学生の女の子の言葉です。
彼女は小児がんで闘病中でした。院内学級へ行くのが大好きで、先生や友だちともとても仲良しでした。つらい治療の合間にも、勉強を頑張っていました。そんな時、何気なくお母さんが訊ねた「なんで、あんたそんなしんどいのに勉強するん?」という問いに、女の子はそう答えました。 「学ぶことは生きること」なのだと。この言葉を教えてもらった時、心からそう思いました。子どもたちからもらった言葉や、いろんな贈り物は私たちの活動の糧となっています。

現在は医療の進歩により救える命が多くなってきました。
それに伴い、子どもたちは大人になり「どのようにより良い社会生活が送れるかどうか」ということが課題になってきます。

そのために必要なことは教育です。教育は成長・発達に重要で心理的安定・意欲の向上をもたらします。さらに治療効果を高めることにもつながります。

しかし一方では、先ほどのデータでも示したように、入院中に教育を受けられている子どもは少ないという現状があります。 また、院内学級へ通うためには、地元の学校から院内学級のある学校へ転校を行わなければなりません。

そして退院後は地元の学校へ籍を戻すため、院内学級へ通うことはできなくなります。治療が継続している子どもの中には体力の問題や易感染のために、学校へ通うことが難しい子もいます。病気を理由に不登校になる子どもも約15%というデータもあり、病気の子どもたちの復学の困難さを感じます。

病院内では感染症対策の面から、面会制限によって学校の先生はもちろん、きょうだいや家族に会えない子どももいます。学齢期に長期間にわたり教育が受けられないことによる不安に加えて、子どもたちの成長・発達を考えると、家族や他者と交流が持てないことも、とても大きな課題につながります。

病気を治していくと同時に、退院後の生活を見据えた上で、子どもたちに必要な教育を通じて成長・発達も保障していくということ。本人やご家族、医療者や教育者など、関わる様々な方々と一緒に考えていく必要があると感じました。

そこで、私は2015年11月11日に仲間たちと病気の子どもの学習・復学支援「NPO法人ポケットサポート」を立ち上げました。

「病気を抱える子どもたちが将来に希望を持ち自分らしく安心して暮らせる社会」を、ビジョンに掲げ多くの方の協力やご支援の下、活動や取り組みを進めています。

【学習支援・復学支援・自立支援活動のフロー図】

ビジョンを達成するための3つのミッションを軸に活動を行っています。

環境を作る
病気を抱えていても子供らしい時間が過ごせるように学習支援・復学支援・自立支援ができる環境をつくる

生きる力を育む
病気による困難を抱えていても前向きに生きていけるよう、当事者や専門家とともに子どもや家族の「生きる力」を育む

人や気持ちをつなぐ
病気の子どもに関わる人をつなぐコーディネートを行うと共に、社会への理解啓発により支援者を増やしていく

病気で入院中であっても、自宅で治療を続けていても、笑顔で将来に希望を持って生きていける地域や社会をつくるため、さまざまな事業に尽力しています。

認定NPO法人ポケットサポート
認定NPO法人ポケットサポートの公式ホームページです。病気を抱える子どもたちが長期入院や自宅療養によって、学習や体験の機会を失っています。病気の子どもたちが安心して勉強や交流、ピアサポート相談できるように支援活動を実施しています。