入院治療中の子どもたちが抱える6つの不安と悩み

コラム

入院治療中の子どもの不安や悩みをご両親が理解することは、子どもの心の安定に不可欠です。そこでこの記事では、入院中の子どもの不安と悩みの正体を明らかにしていきます。

子どもは「不安を理解してもらえた」と実感することで両親をより一層信頼できるようになり、 不安の原因が特定されれば安心できる状態に近づくことができます。それは治療に協力する気持ちを芽生えさせるでしょう。

両親が子どもの不安と悩みを知ることはとても重要なことなのです。

入院中の子どもたちの不安とは

入院中の子どもは不安だらけといっても過言ではありません。しかもその不安にはいくつか種類があります。ご両親はもちろん医療や教育の関係者は 、子どもが今どのタイプの不安を抱えているかを把握して、「その不安」を取り除けるようにサポートをしてほしいのです 。

入院治療中の子どもの不安には大きく、1)一般的なものと、2)子どもに特徴的なもの、の2つがあります。それぞれどのようなものなのか紹介します。

入院中の子どもが抱える一般的な不安

一般的な不安とは、大人でも感じる不安のことです。

科学や医学を知っている大人でも、医師 や病院を信頼している人でも、病室のベッドの上で寝ていると「大丈夫かな」と不安になります。同じことは子どもにも起きています。

入院中の子どもに特徴的な不安

入院中の大人は感じないものの、入院中の子どもだけが感じる不安があります。それは知らないことに由来する不安です。

例えば自宅の居間にいるとき、隣の部屋からガサゴソと音が聞こえてきたとします。ペットの犬がいることを知っていれば不安になりませんが、ペットがいない家庭であれば不安になるでしょう。つまり人は、知らない状態にあると、何が起きても不安になるものなのです。

子どもは大人と比べると、圧倒的にいろいろなものを知りません。それだけ余計に不安になりやすいわけです。

ここからは 、子どもに特徴的な不安を紹介 していきます。

病室という「異世界」への不安

入院中の子どもの不安のベースになるのは、病院にいることや病院で寝泊まりすることへの不安です。人は慣れ親しんだ場所に安心感を覚え、知らない場所に不安を感じます。子どもにとって病院は異世界といっても言い過ぎではありません。異世界に迷い込んでしまった子どもは不安を感じます。

何かが出てきそうな不安

幽霊やお化けといった、よくわからないけど自分に害を及ぼしそうなものが存在することを信じている子どもがいます。そのような子どもは、慣れ親しんだ自宅では幽霊は出ないが、よく知らない病院では出そう、と思ってしまいます。

知らない人に囲まれる不安

病院の医師や看護師たちは入院患者である子どもに優しく丁寧に接してくれますが、それでも子どもにとって医療従事者は知らない大人たちです。

しかも、知っている大人である親や家族が病室から出て帰宅してしまうと、入院中の子どもは知らない大人ばかりに囲まれることになります。

現在も感染症対策のため面会制限が徹底されている状況が続いており、家族との面会は1日15分までと制限されている病院もあり、寂しさや孤独さ、不安を感じて当然です。

家族、友人との分離からくる孤独感

例えば、人混みのなかに出かけても、親や家族と一緒なら子どもは不安を感じません。それは人混みのなかの知らない人々に感じる不安感より、親や家族がいる安心感のほうが大きいからです。

そのため、入院生活が始まって親や家族、友人らと完全に切り離されたと感じてしまうと、孤独感から不安感情を起こすことがあります。寂しさ、社会的孤立、置いてきぼり感といったものが、この不安の原因になります。

先の見えない治療への不安

異世界である病院で行われることは、治療という、やはりよく知らない行為です。大人は治療が科学的医学的に正しい方法で行われることを知っているので、治療を受けることに子どもほど大きな不安を感じません。

しかし子どもは科学も医学も知らないので、「治療を受けること」は「何されるかわからないこと」と同義です。不安が駆り立てられて当然です。

病院に慣れない不安

医師は白衣を着て、看護師はユニフォームを着ています。そのようなスタイルをした人たちの集団は、家庭にも、身近な生活圏にも、学校にもいません。しかも病院の施設や設備は初めてみるものばかりです。

大人は、突然慣れないことに出くわしてもあまり不安を感じません。それは、世の中で慣れないことに遭遇することは珍しくない、ということを知っているからです。慣れないことに慣れているのと不安が起きないのです。

しかし子どもが病院に対して感じた「慣れなさ」は、人生初の「慣れなさ」かもしれません。慣れないことで戸惑ったり悩んだりすれば、不安が湧いてきます。

苦痛を伴う検査や手術への不安

低学年の子ども は治療リスクや治る確率といった概念を理解できません。検査や手術をなぜ実施するのかもよくわかりません。

例えば、ほとんど失敗例がない手術であっても、「自分のときだけ失敗するかもしれない」と思ってしまいます。痛みを感じない検査でも「自分だけ痛むのではないか」と思うかもしれません。

学習の遅れや進学への焦り

勉強する小学生

「学校に行かなくていいんだ」「勉強しなくていいんだ」と喜ぶのも束の間、入院中の子どもはじきに「学校に行かなくていいのだろうか」「勉強しなくていいのだろうか」「入院中も学校の授業は進んでいるのに追いつけるかな」と 不安になります。

子どもながらに、毎日学校に行ってしっかり勉強しないと将来が不安定になることを知っているからです。

子どもたちは毎日のように成長発達を続けています。友達と一緒に登校したり遊んだり、ときにはケンカをすることで人間関係やコミュニケーションを学んでいきます。短い期間の入院でも、学習の遅れだけでなく、友人関係、体力などさまざまな不安と焦りを感じてしまいます。

子どもは3日の入院でも「長い」と感じるでしょうし、入院が1カ月に及べば「永遠」に感じるかもしれません。「永遠」に学校に行けない、と思ってしまえば不安になります。

将来の就職や結婚への不安

子どもの想像は無限に広がり、ときにそれがネガティブな方向に進むことがあります。「病気が治らない→勉強も仕事もできない→就職できない→結婚できない」といったように負の想像の連鎖が起きてしまうこともあるでしょう。

その想像に根拠がなくても、不安や焦りはどんどん募っていき、自己肯定感や自尊心に悪影響を及ぼします 。

不安な状況がいつまで続くかわからない不安

一番の 不安は、不安な状況がいつまで続くかわからないという不安です。

不安の解消法を知っている大人なら、不安を抱えながらも平常心を保つことができます。それは、現状が悪くてもじきに好転することを予測できるからです。未来への希望は不安を減らします。

しかし病気や治療の今後の展開をよく理解できない特に低学年の子ども は、不安を解消する手段も情報もないため、不安が消える状態を想像できません。したがって「この不安は永遠に続く」と思えてしまいます。

先がみえない不安は、相当強い不安になるでしょう。

【まとめ】闘病経験者だから共感できるピアサポートの大切さ

この記事では、あえて解決策を示さず、入院中の子どもの不安と悩みの正体だけを紹介しました。課題を解決するには、課題の正体をしっかり把握する必要があるからです。

不安がっている子どもに、いくらお母さんが「不安がる必要はないよ」と言ってあげても不安は減らないでしょう。

お父さんとお母さんが、入院中の子どもが感じる不安の種類を知っていれば、「このことに不安を感じているのかい」と言ってあげることができます。そうすればご両親は不安に寄り添うことができるので子どもに安心感を与えることができ、その結果、治療や勉強に取り組む意欲につなげていくことができます。

子どもは退院してからも「学校の友達は入院前と同じように話してくれるかな」「病気のことを友達にどう説明しよう?」と不安や心配なことが多くあります。また、「これ以上、お母さんとお父さんに迷惑をかけたくない」と悩みを抱え込んでしまうこともあります 。

お化けの正体を特定してあげて、それを退治する方法を教えてあげれば、子どもはお化けへの恐怖を克服できます。それと同じように、お父さんとお母さんや医療・教育関係者が入院中の不安の正体を特定してあげて、その解消法を説明してあげて初めて、子どもは不安をなくすことができます。

私たちポケットサポートの相談員や支援員には、幼少期に長期療養を経験した者がいます。そういった経験を持つ職員が、メールや電話で、不安を抱える子どもやご両親に対応しています。

皆さんと一緒に、病気を抱える子どもたちが将来に希望を持って自分らしく暮らせるためのサポートを多職種連携で取り組んでいますので、お気軽にお問い合わせください。

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