院内学級は「入院していることを忘れられる」特別な場所

コラム

みなさんは「院内学級」をご存じですか?

「院内学級」とは入院中の子どもたちが治療をしながら通う病院の中にある学級のことで、入院による学習の遅れがないように基礎学力を中心に指導をする場所です。院内学級での学びや遊びが必要な理由について、中学生の颯太くんの事例をもとに考えてみたいと思います。

なんで入院しているのに勉強するの?

颯太くん(仮名・中学生)は幼少期から入院と退院を繰り返していて、中学校時代は長期の入院(約半年)を1回、短期の入院(約1か月)を3回経験しています。

すべての入院で院内学級に通いながら勉強したり、年齢は違うけど同じように院内学級に通っていた仲間と交流をしていました。

颯太くんは最初のころ「なんで入院しているのに勉強するの?」と思っていましたが、院内学級は単に勉強するだけの場所ではなかったのです。

院内学級では5教科(国語、数学、英語、社会、理科)の勉強だけではなく、調理実習、音楽、体育(卓球)などの教科の授業もあり、休み時間には先生と一緒にトランプやボードゲームをして遊ぶこともあります。

通常の学校と同じように月曜日から金曜日まで時間割があり、学期ごとに始業式・終業式も行われます。また、教科によっては教科担当の先生が病院に来て、授業をしてくれます。

颯太くんは院内学級を塾のように入院中の子どもたちが勉強だけをする場所だと思っていましたが、地元の中学校と同じように時間割があること、教科ごとに担当の先生が授業をしてくれることに驚いていました。特に休み時間にトランプやボードゲームで遊んでいると、入院中でも学校のように感じる瞬間があったようです。

入院中の子どもたちが会話をするのは医師や看護師といった医療従事者がほとんどで、同世代の友達と会話をする機会や交流は少ないのではないでしょうか。颯太くんも会話するのは医師の回診時、看護師の検温、お母さんの来院時くらいで、それ以外は一人で過ごしていました。

院内学級は入院中の子どもたちにとって大切な場所

颯太くんは長期入院で思春期だったこともあり、病室にいることが嫌で、そのストレスが増していきました。長期の入院治療をしている子どもたちや、苦痛を伴う治療を受けている子どもたちのストレスは私たちの想像以上だと思います。

院内学級という特別な場所(パワースポット)に行くと、担任の先生や仲間が悩みや嫌なことを聞いてくれたり、ありのままの気持ちを共有もできます。院内学級には病棟が違う子どもたちも通っているので、普段話せない同世代との会話や趣味の話、相手の悩みを聞いたりもできます。

颯太君が病室で笑うことは少なかったのですが、院内学級に行くと休み時間にみんなでボードゲームをして思いっきり笑い、「入院していることを忘れられる」と言ってくれました。

同世代の仲間同士で勉強を教えあったり、みんなで調理実習をしたり、音楽の授業でギターを弾いたりと病院内とは思えないほど色々な体験を経験し、颯太君の精神的なストレスは少しずつ軽減されていきました。

入院が長期になればなるほど、子どもたちの学習の遅れやストレスは大きくなりやすいです。

院内学級は入院中に学校と同様の体験・経験ができるだけでなく、学びや遊びを通して病気の辛さや悩みを共有できる仲間を作ることもできます。

院内学級は痛い注射や処置、苦い薬を両親に迷惑をかけたくないと我慢して頑張っている子どもたちにとってかけがえのない大切な場所なのです。

まとめ

颯太君の事例は特別なものではなく、小児がんや心臓病など慢性疾病を抱える子どもたちに共通している部分が多くあります。ですが、新型コロナウイルス感染症対策により院内学級での交流が制限されていたり、担任教諭以外の入室が制限されている状況が続いています。

子どもたちの命を守る病院と、子どもたちの学習保障や心のケアを担う院内学級の存在は、これからの明るい未来を担う子どもたちの成長発達に必要不可欠です。

医学の進歩により救われる命も増えており、入院中や自宅療養中の子どもたちの教育を保障する体制を病院や学校、教育委員会、保健所、地域支援団体など様々な関係機関と連携して整えていくことが、さらに必要な時代に突入していると感じています。

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